ぼくの身体が無血開城

風邪。
 世間では豚インフルエンザが蔓延していて非常に恐ろしいというのに、ぼくはそこら辺の名もない風邪菌に苦しめられている。何という不甲斐ない。
 姉からうつされたと見られるが、当の姉はけろりとしている。ぼくは昨日ほとんど眠れない程呻吟したと言うに。
 そもそも、熱が上がらない。熱は身体が病と闘っている証だという。
 こんなにキツいのに、平熱のママというのは、これは白血球に全く戦う気のない証左ではなかろうか。侵入者に対して無条件降伏、無血開城とは我が身体ながらなんとも情けない。貴様らそれでも日本人……の身体を構成している免疫機構か……!
 しかし、負け戦は負け戦。
 かくなる上は、ぼくが身体のトップかつ象徴として玉音放送までしなければなるまいとも考えている。耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び……
 人間宣言も必要か。いや、寧ろ、人並みの免疫が欲しい。